突如襲った難病の記録 第1章
寝起きで手足に痺れ(麻痺)を感じたらすぐに病院へ行きましょう
当ルポは5つの記事に分けて投稿する(予定)内の2/5である。
それは突然のはじまりだった
いつも通りの朝、目覚まし時計に叩き起こされ、手を伸ばして音を止める。
辺りは明るくなっている。
何の変哲もない朝である。
さてと、今日もいつも通り準備しようか、と立ち上がろうとしたその瞬間、私は前に転んだ。
「なんだこれ…… !?」
思わず口に出してしまったのだが、明らかに様子がおかしい。
「ん?」とか「あれ?なんか調子が悪いなあ」では無い、人生で感じたことのない異様な感覚。
足が思うように動かないのである。
表現するとすれば、長い間正座していて急に立ち上がった時のようなしびれに近いだろうか。
再び立ち上がろうとしてみるも足に力が入らない。
どうやら膝から下が特に動きが悪いようで、足首がうまく動かせない。
変な格好で寝てしまい、足への血流が悪くなっていたのかと思い、足を屈伸したりストレッチしてみる。
左足は改善するも右足は変化なし。(後から振り返るとなぜ左足が元に戻ったのかは謎である)
症状に左右差があるということからある病名が脳裏をよぎる。
【脳梗塞】
とりあえず動かない足を何とかして鏡まで行き顔面を確認する。
幸い顔は全く異常がない。
口角を上げたりウインクをしてみるが違和感はない。
以前、遠方にいる知人の写真の表情が左右非対称で脳梗塞疑惑があがったことがあり、その時に症状について調べた知恵を思い出す。
呂律が回らなくなる、めまい、頭痛。
どれも無い。
とりあえず一安心ではあるが明らかにおかしい状況なので不安は募るばかりである。
とりあえずGoogleで検索してみる。
この時の履歴が残っていたので以下に記載する。
- 足に力が入らない 一時的 寝起き(ストレッチで左足が改善したため一時的と入れたようだ)
- 膝から下に力が入らない
- 脳梗塞
- 痙縮
- 脳幹出血
- くも膜下出血
- アベフトシ(たしかアベフトシってくも膜下出血だったよなと思って検索した模様)
- 寝起き 脚 しびれ
- 寝起き 足 しびれ 正座
ここまで調べたところで時間が無くなり慌てて家を出る準備をする。
9:00から打ち合わせのアポが入っているため昨日は営業車で直帰していた。
明らかにおかしい足に動揺しつつもこの段階では状況を把握しきれず、[とにかく仕事に行かなければ]の一心で家を後にした。
蝕まれていく感覚
家から駐車場までの足取りもいつもとは違う。
足が思うように動かないため不安はあるがなんとか車の運転はできた。(今振り返るとかなり危険である)
コインパーキングに車を停め、少し時間があるため妻に電話をする。
ちなみにここで軽く自らについて触れておくとアラサーで妻と二人暮らしのいたって平凡なサラリーマンである。
基本的には妻は在宅で仕事をしているのだが、こんな時に限って地元の行きつけの美容室に行くため帰省中である。
この時点ではまだ「何か足がおかしいんだよねー」くらいの報告に留めていた。
電話を切り、打ち合わせ場所に歩いて向かうがやはりおかしい。
感じたことのない違和感と恐怖にほとんど頭の中を支配されながらも何とか打ち合わせを終える。
何とか気づかれなかったようでホッとしつつも、この後どうなってしまうのか不安に苛まれながら営業車で会社へ向かう。
運転中の事はほとんど記憶にない。
ただただ不安と恐怖で一杯だった。
会社に到着し自分のデスクに向かう。
起床からここまで4時間ほど、この間にも少しずつ足に力が入らなくなっていた。
それも右足だけ、膝から下なのである。
原因と病名を特定したい、わからないままだと不安で物事が手につかないほどであった。
パソコンで調べると通りすがりの誰かに見られる可能性があるため、iPadでこっそり検索してみる。
- 手足のしびれ 自律神経失調症
近い。
- ギランバレー症候群
!?
ほとんど当てはまっている!
ここで妻にLINEを送っていた。
やりとりのスクショを以下に載せる。
ちなみにこの「へー、君まだ~したことないんだ」「まだ若いからね」というのは我々夫婦間のみで流行っているマウント取ってくるウザいやつというネタである。
この時点ではまだ確定的判断は下せていない状況であった。
とりあえず午前中に終わらせなければならないデスクワークに取り掛かり、何とか終える。
昼まで少し時間があるため、今の状況を整理しようと考えた。
何せ感じたことのない違和感なのである。
いや、違和感という言葉では表しきれないほどの理解し難い状態であった。
この世に生を受け、一人で歩きだし、物心ついてから今まで一度も、ただの一度も感じたことの無い感覚なのである。
足を動かそうとして痛みを感じたことはあれど、動かない、反応しないという現象に戸惑うしかなかった。
確実に悪化しているような感覚があったため、このままだと会社で身動きが取れなくなる恐れを感じた。
事務所には部下ばかりおり、上司が不在だったため上司に電話する。
ルポ主「もしもし、お疲れ様です。あの、冗談では無くて真剣な話なんですけれども、足が痺れてまして…」
上司「え!?大丈夫か?もうすぐ事務所に着くからとりあえず待っといて。」
とのことで電話を切ると数秒で上司が帰社してきた。
ルポ主「すみません、朝から足が痺れているというか何というかよくわからない感覚でとにかくおかしいんです。今日の午後は在宅勤務とさせていただいてよろしいでしょうか?…」
上司「大丈夫か?まあええけど、足痺れてるってそれ病院行った方がええんちゃうん?」
ルポ主「自分でもよくわからないんで、寝たら治るかもしれないんで、明日朝起きて治ってなかったら病院行きます。」
という会話をして足早に(といっても足は不自由だが)事務所を出る。
事務所から最寄りの駅まで、普段は10分かからない距離なのだがこの日ばかりは30分以上かかってしまった。
電車に揺られながらも頭の中は不安で支配されている。
この足で家までたどり着けるのか?…タクシーに乗った方が良いのか?…LUUP使うか?…
あれこれ考えているうちに自宅の最寄り駅に着いてしまう。
こんな状況でも貧乏人根性を発揮し、タクシーは高いから歩いて帰るかーとなってしまう悲しき会社員の性である。
自宅から最寄り駅の間は普段15分かからないほどなのだが、この時は1時間近くかかったような感覚がある。
なんとか自宅に到着。
何を食べたかは全く記憶にないが、昼食を取り30分ほど寝る。
起きても全く改善した感覚は無い。
とりあえず会社から持って帰ってきたノートPCを開き仕事を再開する。
仕事内容は全く記憶に残っていないが定時まで仕事をしてきっかりで切り上げた。
普段なら平均して22:00くらいまで仕事をしているが、この日ばかりはそんな余裕はなかった。
妻からLINEが入る。
「何か買って帰ろうか?」
なぜか私はここでパッションフルーツをリクエスト。
無かったためドラゴンフルーツになる。(結果的にこれが入院前最後の晩餐になった)
記憶にないが恐らく晩ご飯も食べたであろう。
足がおかしいので転んだりしないか不安になりつつも風呂に入り、歯を磨き、布団へ入る。
少し経ってから強烈な腹痛と吐き気に襲われた。
何とかトイレには到着するも、下痢では無い。
脂汗をかきながらも痛みに耐え、胃腸薬を飲み一段落したタイミングで再度布団に入る。
念のため、病院を調べる。
こういう場合は脳神経系の病院になるようだ。
最寄りの脳神経外科は休診日だが、幸い4kmほど離れたところにある医院がやっているようだ。
妻と情報共有し就寝。
明日になれば元通りになっていることを祈って…
変わらぬ朝
いつものように目覚まし時計に叩き起こされ、手を伸ばして音を止める。
変わらぬ朝だった。
いつもと変わらぬ朝ではない。
昨日と変わらぬ朝である。
足が回復していないことを妻に告げ、病院に行く準備をする。
朝食を食べたかは記憶にない。
目星をつけていた医院の診療は9:00からのため少し時間がある。
この間にお客様に電話をする。
今日も2件アポが入っていた。
幸い、理解のある協力的なお客様で仕事のことはそっちのけで心配していただき大変申し訳ない気持ちになった。
上司にも電話し、とりあえず病院に行くことを伝える。
開院時間が近づいてきたので家を出る。
我が家は車もあるが保管場所が少し遠いためタクシーで行くことになった。
もはやまともに歩くこともできなくなっていたためこの時ばかりは仕方がない。
右足は↓の写真のような足首を上下する動作が全くできなくなっていた。
右足を完全に引きずりながら歩いていたため(○ッ○を引くとよく言うが放送禁止用語らしいので記載は避ける)近所のおばちゃんに「どうしたん??」と心配されるほどだった。
家のすぐ近くでタクシーを拾う。
70歳は確実に超えているであろうおじいちゃんドライバーの運転に一抹の不安を抱えながらも病院前へ。
足を引きずりながら入り、問診票に記入。
この時点で手にも痺れが発生してきたことに気付く。
院内には6~7人ほど待ちがいる。
ここで何げなく鞄の中を見ていてあるモノを見つけた。
12日前に「焼き鳥屋」に行った領収書が出てきたのである!!
昨日調べたところ、ギランバレー症候群は鶏肉(カンピロバクターウイルス)で発症することが多いらしい。
発症の1~3週間前に下痢をしたり感染症の症状があるというところもピンポイントで合致する。
記憶から完全に消えていたのだがここで全てが繋がったのである!
時系列順に並べる
- 0日目:焼き鳥
- 4日目:お腹をくだす(ちなみに妻もお腹をくだしていた)(下記LINE参照)
- 6日目:腹痛が治る
- 7~10日目:なんか調子が悪い(頭痛等)
- 11日目:発症
- 12日目:受診
ちなみにあかつぶ貝は映画[武士の一分]で木村拓哉扮する主人公が食中毒で視力を失う原因となるものでネタである。
詳細は映画をご覧あれ。
話は戻り、お腹をくだした前日にスペアリブを食べていたため、それに気を取られてしまっていた。
妻は腹痛の原因としてスペアリブを疑っていたのだが、完全に火は通っていたし味もなかなか美味だったため違うよな気もするけどなーというところで話が終わっていた。
改めて考えると鶏刺しや半生の肝串も食べているのでかなり怪しい。
というかほぼ確定と言っても問題ないだろう。
ただし、当店舗に訪問したのは初めてだったが、他の店では鶏刺しは頻繁に食していてあたった経験も無い。
当HPの姉妹サイトで店のことを記事にしようと写真を撮っていたので以下に載せる。
ちなみに味はおかしいところは無く、割りと美味しかったように思う。
客入りもよくほぼ満席だったため他の客の具合が気になるところだ。
店名は非公開とするが気になる方はコメントもしくはInstagramにて連絡を。
原因がほぼ確定したところで開院時間になり医師のおっちゃんが現れる。
待合室に来て私のところへ一直線に来た。
「すみません!先にお待ちの方もいらっしゃいますがこちらの方を先に診させていただきます。」
とのことで妻を待合室に残し診察室へ入る。
医師「どうですか?状態は。問診票一通り見ましたが…」
ルポ主「右足が動かなくて…具体的に言うと足首が上に全く上がらない状態です。」
医師「なるほど…」
ルポ主「今になって手も痺れてきて、自分で調べたところギランバレー症候群かと思うんですが… 」
医師「(喰い気味に)かなっ!!!当院では対処しきれないのですぐに救急車で大病院に搬送します。」
ルポ主「えぇ…」
医師「すぐに入院です!!このままほっとくと死ぬ可能性もあります。」
ルポ主「えぇ…」
医師「奥さん呼んできていただけますか?」
困惑しつつも診察室と待合室を隔てる引戸を開け、待合室を見るが妻はケータイをいじっていて気付かない。
全く…こんな時でもケータイか…と呆れつつも呼びに行こうと一歩踏み出したその瞬間、ド派手に転んでしまった。
ドチャッ!!という音とともにうつぶせで地面にへばりつく。
イメージ的には下記画像の通りである。(フリー素材より拝借)
待合室にいる他の患者さんと医師、看護師に助けられ椅子に座る。
この時には足を引きずって歩くこともできなくなってしまっていた。
自分の足(脚)ではないような不思議な感覚、どこまで力が入るのか、どこまで踏ん張れるのかというのが全くわからない状態である。
正直この時は情けないやら恥ずかしいやら不安やらでほぼ泣きそうになっていた。
医師「赤十字病院と○○病院どちらがよろしいでしょうか?」
ルポ主「どっちも知らないです…逆にどっちが良いですか?」
医師「ご自宅から近いのは?」
妻「ほとんど一緒ですね。」
たしかここで距離を見るついでにGoogleマップで評価を見た。
こんな時でもGoogleマップの評価を見てしまうのはGoogleに支配されているようで恐ろしい気もする。
ちなみに件の焼き鳥屋は当記事執筆時点で58評価★4.3だったのでGoogleマップの評価が絶対的信頼を置けるものではないことはわかるだろう。
とはいえ他者の口コミという一つの指標は気になるものであり、参考程度と思っていても見たら気にしてしまうのが人間の性である。
そして大病院というのは得てして酷評されがちであり、例に漏れず両院ともクレームのオンパレードであった。
ルポ主「赤十字でいいです。なんとなく、よくわからないんで。」
医師「わかりました。救急車到着しましたらストレッチャーで搬送しますから、座っていてください。」
医師が病院、消防とやりとりしているのを聞きながら改めて足を観察する。
右足はどんなに力を入れてもピクリとも上がらない。
次第に脂汗が滲み、足を動かすことを諦めた。
思えば人生初の入院である。
幼稚園に入る前、物心ついたころからサッカー一筋だったため体力は人並み以上にあると自負している。
社会人になってからは流石に運動をする回数は減ったものの、タバコも吸わずお酒は嗜む程度。
食生活もコンビニ等はなるべく使わず、体調管理に気を使っていたため、入社以来病気で休んだのはコロナにかかった時だけだ。
サッカーをしている時は股関節の負傷で長期離脱をしたことはあったが、骨折や靭帯損傷等はなかったため手術や入院にも縁が無かった。
ちなみに救急車自体はバイク事故で2回乗っている。
こんな形で人生初の入院生活が始まるとは予想だにしなかったが、入院する人というのは大概がこんな形でいきなり入院になるのだろうと思う。
これから始まる人生初の経験に期待と不安に胸を躍らせながらと言いたいところではあるが、この時ばかりは不安で押しつぶされそうになっていた。
救急車の音が少しずつ近づいてくるとともに、平凡な日常が遠ざかって行くような気がして心の中はほぼ満杯まで不安で満たされていった。
救急車が到着しストレッチャーで搬送される。
医師「がんばれよ!!よくなるから!!絶対よくなるからな!!」
なぜか急に馴れ馴れしく元気づけてくる医師。
このおっちゃん良い人なんだろうなと感じつつも、逆にそんな大事なのか?と更に不安になってきて泣きそうになった。
ドアが閉じられ、救急車は赤十字病院へと走り出した。
小刻みな振動に揺られ、不安をかき立てるサイレンの音に包まれながらルポ主人生初の入院生活が幕を開けようとしていた…
~入院生活編に続く~
「朝起きたら足に力が入らないので病院に行ったらギランバレー症候群で即入院になったルポ~発症から入院編~」への5件のフィードバック